風祭文庫・頂き物の館

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頂き物・第9話「コルタンの守護者」


 今や日常生活に欠かせないツールとなっているスマートフォン、パソコン、テレビ
それらの液晶画面にはコルタンという鉱石が使われていることをご存じであろうか。
そして、それが産生できる場所は限られていることに。


 沼ノ端市にあるとある中学校。
 「失礼します」
 一人の女生徒が生徒指導室に呼び出された。
 彼女の名前は瀬長佑里奈。
 成績は可もなく不可もなく、部活動のテニスにもいそしんでいるごく普通の中学生であったが、
彼女にはとある理由から生徒指導室に呼び出されてしまった。
 彼女は中学校に入ってからスマホを買ってもらったのだが、そこから彼女がスマホなしでは生活できなくなってしまうほどであった。
学校の友達ともLINEなどのSNSを常に使っていて、家に帰れば常にスマホを使っており、そのようなトラブルに巻き込まれてこなかったのが
幸いと言うほどであった。
 そして、授業中に携帯をならしてしまうことはおろか、つまらない授業中にはこっそりスマホを使用していて没収されていることが多かった。
そんな彼女もついに生徒指導部に呼び出されることとなってしまった。
 教師は佑里奈に言う。
 「まったく、お前は何回スマホばかり…お前のご両親も非常に心配されていたぞ」
 教師は怒る。
 「だって、スマホがなかったら、連絡も取れないし」
 佑里奈はいいわけを繰り返す
 「ところで、お前、スマホの画面って何でできているか知ってるのか?」
 「知りません!」
 佑里奈は大声を出してしまう。
 「コルタンという石でできている」
 「はあ、何それ?」
 佑里奈はさらに反抗的な態度を取ってしまう。
 「そうか…ならばそれを見るといい!」
 そういうと教師は生徒指導室の怪しげな扉を開けた。
 そこにはなにやら呪術に使うような魔方陣や怪しい仮面などがあった。
 「これからお前には画面の原料がある地域に行ってもらう!」
 そういうと教師は魔法陣の真ん中に移動し、怪しい呪文を唱え始めた。
 「…な、なに…」
 辺り一面は怪しい霧に包まれた。そして、その霧は佑里奈の体に覆い被さった。
 すると…佑里奈の服は破れ、体は大きくそして黒くなっていった。全身を筋肉が覆い、
 ペニスや金玉が飛び出した。そして髪の毛は抜け落ちた。
 「何するのよ…!」
 佑里奈はすっかり低くなった声で叫ぶが
 「お前は今からディンカ族の屈強な男になった。お前は今からアフリカの奥地に向かってもらう!」
 そういうと教師は怪しげな扉を開き、ジャングルの景色が見えたところに佑里奈をほおりこんだ。

 「ここは…」
 ジャングルに住むディンカ族の一部の村。
 彼女は今日からディンカ族となった。
 ディンカ族となった佑里奈は毎日格闘や狩猟採集に明け暮れ、いつの間にか部族で一番屈強な男となった。
 そこに、族長が言う
 「今からわしらの宝がある洞窟に案内しよう」
 佑里奈はそう言うと族長について行った。
 その洞窟の最深部…なにやら光り輝く石が置かれていた。
 「これはコルタンという石でな、日本でも人気のある石なんだ」
 コルタン…どこかで聴いたことがある名前だ…
 「お前に、この宝を守る役目を与えよう」
 こうして、”コルタンの守護者”となった佑里奈は他の部族やゲリラなどからコルタンを屈強な肉体を生かして
守っていた。
 だがある日、突然の地響きとともに洞窟の天井が崩れ始めた。
 「くっ・・・」
 なんとか天井を押さえて守ろうとするが、
 次々と崩れ落ちる天井には勝てなかったようだ。

 数時間後…
 「ここは…あの洞窟…?」
 ”コルタンの守護者”は、目の前に光り輝く石”コルタン”が無数にあることに気がつく。
 「気がついた?」
 そう言ったのは、一人の女性だった。なにやら血に染まった白衣を着ているようだ
 「あなたは?」
 女性が問いかける
 「あたしは…”コルタンの守護者”コルタン…思い出した、あのスマホの画面の材料になっている」
 佑里奈は言った。
 「まずはパンツでもはきなさい。話はそれからよ」
 女性は佑里奈に紫色のビキニパンツを手渡した。
 「十分似合うじゃない。」
 女性は続ける。
 「あたしは瀬長佑里奈。生徒指導部の教師に呼び出されて、それでこんな姿に。」
 女性は言う。
 「あたしの名前は榊マリコ。地獄の科学捜査研究所の研究主任よ。」
 マリコは答えた。
 「ここ、地獄ってことは、あたし、もしかして死んだの?」
 佑里奈は答える。
 「いいえ、厳密に言うと、地上の洞窟とこの冥土がつながって、そこにたまたまあなたが落ちてきただけ
いろいろと理がおかしくなっているみたいで、いろいろなところで地上と冥土がつながっているようなの。」
 マリコは続ける。
 「ここ、沼ノ端ともつながってるの?」
 「ええ。もちろん。」
 マリコは答える。
 「ここは地上とはいろいろと逆転しているから、地上では貴重とされているコルタンも、ここにはたくさんあるの。」
 「みて、アレを…」
 そこには人型のコルタンがいくつか存在していた。
 「あなたをこんな姿にした生徒指導の教師は、何でも多くの女性を誘拐しては部族の男に変えるビジネスを始めていてね。
 あなた以外にもいろいろと犠牲者がいたのよ。」
 冥土にある別の施設では、ビキニパンツをはいた黒人筋肉男が何人もいるという。
 「このコルタンは研究にとっても貴重なの。あなたには一回女の子に戻って沼ノ端に帰るといいわ。」
 マリコはそう言うと怪しげな液体を佑里奈に渡した。
 
 沼ノ端に帰ってからというもの、突然失踪した女子中学生が帰ってきたことで騒ぎになったのだが…
 佑里奈としてはコルタンという貴重な石で液晶画面ができているとわかってから、
 スマートフォンを乱用しなくなっていったという。

 しかし…
 「あんた、そんな姿で歩いてどうするの!」
 母親が祐理亡い言う
 「いいじゃない。この姿の方が悪い男に出会うわけじゃないし。」
 男の快感も知ってしまった佑里奈は時々黒人筋肉男の姿になり、ビキニパンツ1枚で出歩くようになってしまった。

 「我はコルタンの守護者!」
 佑里奈は街の中でポージングをしている。
 

頂き物・第8話「母子家庭」


 ある冬の夜-
 この時期に大雪が降ることは珍しかった。だが、大雪の中で、
しかもビキニパンツ1枚でパフォーマンスをする二人の黒人筋肉男がいた。
 筋肉男はオレンジ色と水色のビキニパンツを身につけ、
二人でポージングからスタートし、二人で格闘と思われる、
この雪の地には似つかない、アフリカの部族のものを彷彿とさせる格闘まで行った。
防寒対策を十分にしてきた観客に比べるとこの二人は寒さにびくともしないようだった。
やがてパフォーマンスは終了し、観客達がぞろぞろ帰って行った後、パフォーマンスの企画者から
二人の黒人筋肉男、いやアフリカの中でも1、2を争う屈強な部族、ヌバとしておこう。
彼らにギャラとしていくつかの札束をわたすとともに、ビキニパンツの中のおひねりをすべてもらっていいと言うことだった。
 
 雪の中をビキニパンツ1枚で歩くヌバ二人。
 オレンジ色のビキニパンツの男がこういった。
 『ママ、今日も稼いじゃったね。』
 水色のビキニパンツの男がこう答える。
 『ええ、佳奈子ちゃんのおかげでこんなよ』
 そう、二人の屈強な男は元々は母と娘だった。
 この母、本山沙織と本山佳奈子、この二人は大量の借金を返すためこの姿でパフォーマンスをしていた。
 『給食費を差し引いても借金返済にはなんとか回せるし、もう少しで借金が返せそうよ』
 沙織は白い歯を見せながら笑った。
 『ママと一緒だとどんな姿でも安心。しかもこの姿だと寒くないし。』
 『ええ、あなたには苦労させたくないしね。この姿をのぞいては…』
 沙織は過去のことを思い出す。

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この地より離れた場所で母子家庭で育った沙織。
家は貧しく食べるものはおろか、水にも困るほどであった。
それどころか彼女の母親は常に男を渡り歩いては借金を重ね、
その男ともども沙織を虐待して歩いていた。
 中学校を卒業して沙織は家を飛び出し、この街に来た。
生活費を稼ぐために様々なバイトを始めるも悪い男に引っかかっては巻き上げられ、
ひどいときにはレイプされてしまったのだった。

 そして、レイプからの妊娠、妊娠しても堕胎する金もない。
仕方がないので佳奈子を産んだ。それが10年前の今日だ。
それから何回も彼女のことを捨てようと思ったが、愛着がわくと彼女とともに
強く生きていこう、そう思いバイトに明け暮れる。
 だが、バイト先に一人の男がやってきた。
 「本山沙織さんですね。」
 男はグラサンをかけたヤクザのような男だった。
 そして、男が沙織に渡した名刺にはこうかかれていた。
 「かうかうふぁいなんす」と。

 -かうかうふぁいないんすに案内された沙織、
 底の社長、宇師嶋薰という男-ヒゲずらに眼鏡をかけた人相の悪い男だ。
 「あんたの母親が作った借金が相当かさんでてね。もう国家予算ぐらい。」
 宇師嶋は沙織に告げた
 「ちょうど、あんたを連帯保証人にしていてね。あんたに払ってもらおうと…」
 宇師嶋は強面で沙織に詰め寄るが
 「そんな金、ありません!」
 沙織は強く答えた
 「払えないんなら、体で払ってもらおうか!」
 宇師嶋はそう言いながら笛を吹いた
 そこに、二人のビキニパンツをはいた黒人筋肉男が現れた。
 「そいつを地下に連れて行け!」
 宇師嶋はそういうと沙織を地下室に連行した。

 地下室。底には怪しげな呪術の道具がたくさんあった。
 そして、底には黒人の呪術師がいた。
 呪術師は怪しい呪文を唱え出す…
 すると、
 沙織の体はどんどん大きく、そして黒くなり、胸やおしりは平らになり、さらに手足の筋肉が発達し
長さも伸びていった。胸板は張り出し腹筋も五つに割れた。そして股間からは巨大なペニスと抗がんが出現した。
髪の毛も抜け落ちてしまった。
 
 沙織はまさにヌバ族の男になってしまった。
 怪しげな部族の踊りをしながら、沙織のペニスはどんどん大きくなる
 「お前は今日から、ヌバになるのだ」
 異次元への扉が開かれようとした。
 「いや、あたしは娘を守る。娘を守るって決めたもの!」
 そういうと沙織は扉から去って行った。
 「そうか、ならばここにいる二人の男をたおすがよい!」
 呪術師はそういった。
 そして、沙織は彼女を連行した二人の筋肉男に向かっていった。
 とにかく勝つ、娘を守る。そういう思いだけを胸に
 どれぐらいの時間がかかったのか、ぎりぎりで男二人を倒すことができた。
 「よくわかった。お前の根性は見抜いたぞ」
 そう言ったのは宇師嶋だった。
 「よくわかった。お前はその姿で俺のボディガードかつモランの戦闘員として生きろ。」
 「これはお前に渡す」
 そういって宇師嶋は沙織に水色のビキニパンツを渡した。
 「それと、今日の試合は面白かったからギャラだ」
 そういうと宇師嶋は札束の入った封筒を渡した。
 その中の額は通常の会社員であってもとても稼げるような額ではない大金だったが、それでも借金返済には
 焼け石に水程度だった。
 「その中のいくらかは生活費に充てていいが、きちんと返済することと娘をきちんと守ること、それが
 俺がお前に課す条件だ。」
 宇師嶋はそう言い残した。
 そして、屈強な男に後ろからつつかれると、沙織は元の女性の姿に戻った。

 それから最低限のアパートを借りて娘と住み、戸籍も取得した。
 そして、ヌバの男に変身して宇師嶋や裏社会のボディガードをやったほか、各種興行で順調に借金は返済していた。

 そして、佳奈子が小学校に入学した頃…
 佳奈子には他の子が着るようなきれいな服は着せられなかったが、
 それでも借金返済して最低限佳奈子の服だけはそろえた。
 寒い冬は佳奈子には布団を与え、自分は筋肉男に変身して寒さにしのぐ…そういう日が続いた。

 だが、ある夜に沙織が着かれて家に帰ると、本来であればいるはずのない存在があった。
 それはまさに沙織が変身したヌバ族の屈強な黒人筋肉男。
 『ママ…あたし、こんな体になっちゃった』
 「佳奈子…どうして。」
 沙織は絶句した。
 『ママがこの格好でねてるのずっと知ってた。あたしに服を着せて、自分はこんなかっこうになって…』
 姿は筋肉男になってもしゃべり方は小学生の女の子のままだ。
 『いいのよ…あなたにはこんな姿になってほしくなかったけど…』
 そういうと沙織は佳奈子にオレンジ色のビキニパンツを渡した。

 それからは佳奈子も沙織も二人分のギャラをもらえるようになり、さらに順調に借金を返済していった。
そして、佳奈子が10歳になる誕生日の興行で借金が返し終わる。

 そして、二人は宇師嶋の元に行った。
 「これで借金は完済。もう自由の身だ。だが、お前達にはまだやってもらいたいことがある」
 そう言うと横からとてもヤクザとは思えないスーツ姿の男がやってきた。
 「地獄の獄卒長の大岩ともうします。あなた方には是非協力していただきたいのです。」

 佳奈子と沙織は少し戸惑いながらも、この依頼に了承するのであった。

頂き物・第7話「樹環外伝」 

-閻魔王庁・副司令室
 コンコン!
 ドアをノックする音が響く
 「入りたまえ」
 ジョルジュ副司令は落ち着いた表情で答える。
 「失礼します」
 スーツを着た一人の男が入ってきた。
 彼の名前は大岩純一。ヒラから成り上がった最強の獄卒長と呼ばれている男だ。
 「樹怨のあの事件、まだ終わっていないのではないかと思いまして。」
 大岩は唐突に話を切り出す。
 「あの、樹の少女たちのことか?」
 ジョルジュ副司令は言う。
 「はい。あの樹の少女たちは何回か三途の川、彼岸のほうに来ています。まあ、彼岸に来ても
彼女たちが何か悪さをしているわけではありませんので様子を見るしかありません。
 しかし、もしかしたら沼ノ端には何箇所か三途の川に通じている場所があるのかもしれません」
 大岩はその指摘をする。
 「なるほど、前の災厄のとき、鍵屋の魔法により、柵良たちが彼岸に到達するルートを辿ったが、
そこは確か沼ノ端とは離れた東北のほうだったな。あのルートはたしか鍵屋が一旦閉鎖したはずだが」
 ジョルジュは七夕の飾りをいじっている。
 「沼ノ端から、地獄に通じる道はあります。たとえば御神木を伝えば翠果の森などに出ることはできます。
しかし、現世の人間が地獄に行くためには化生の力が必要となります。化生の力を持つ人間かあるいは
化生の力をもったものに変身しなければ地獄を通過することはできません。」
 大岩は窓の外にある何本もの樹木を見ている。
 「そうか。ひいてはそのルートがあれば現世の人間がこちらに入り込んでしまう可能性がある、か。」
 ジョルジュは納得しながらそう返す。
 「ですので、この件に関しまして、われわれのほうでもう少し調べてみたいと思います。」
 大岩はさらに声を張り上げる。
 「そうか、大岩獄卒長、ベリー・グッドです。」
 ジョルジュはそういうと
 「ありがとうございます!」
 大岩は頭を下げた。

 副司令室を出る大岩。
 副司令室の前の廊下には、白衣を着た一人の女性が立っていた。
 「今日も研究ですか、ドクター・榊」
 大岩はじゃれあうかのように答える。
 「そういうんじゃないわよ。」
 榊という女性は白い白衣をぬぐった。
 女性の名前は榊マリコ。閻魔王庁の科学研究所、通称「地獄の科捜研」の女性研究員だ。
 「白衣を洗濯したのか。この間はずいぶんと血で汚れていたものだ。」
 大岩は答える。
 「ええ。亡者を使った研究でね。結構血が流れたのでさすがに洗濯したの。
地獄の法医学教室の二宮先生ほどじゃないけどね。」
 マリコはども…大岩に返事を返す。
 「今日はまた洗濯して、誰か来るのか?」
 「ちょっとDr.ダンに頼まれたから。現世からくる人間の強化をね。沼ノ端の災厄、
これだけじゃ終わらない気がしたから。」
 「そうか。お前も沼ノ端の災厄がまだあると考えているのか。お互い、切り口は違うが
その異変が何なのか、必ずホシを挙げてみせる。」
 大岩はそういうと廊下を去っていった。

 さて、大岩が獄卒の詰め所に戻ろうとすると、ドアの前で黒い大きな筋肉の塊があったことに気がつく。
スキンヘッドに漆黒の肌、全身をよろいのように覆う隆起した筋肉、そして青いブーメランパンツ。
ただそのブーメランパンツのふくらみは小さく、変わりに胸には二つの脂肪の塊が…
「おや、あなたは柵良茉莉さん。何の御用ですか?」
大岩は目の前の筋肉の塊に対してたずねる。
『今日はマリコさんに強化をお願いしていますの』
柵良茉莉、いやマッチョマンレディはこう答える。
「そうですか、で、うちの部署の前で何をしているんですか?」
大岩は答える
『実はこれを差し入れに来まして。』
マッチョマンレディが持っているもの。それは竜宮神社特性の大福もちだ。
「これはこれは、どうもありがとうございます。これは私のほうから渡しておきます。」
大岩は大福を受け取った
ガチャ。大岩が部屋に入る。
「ほら、ダイフク。差し入れだ」
「ありがとうございます」
ダイフクと呼ばれた獄卒はうれしそうにほおばる
「まーた大福かよ!」
獄卒のヤマサンが答える
「この大福の二重構造、白いもちで黒い餡を包む…
でもこっちは黒い餅で中の餡は緑っぽい…
色はともかく、この二重構造が」
ダイフクはおいしそうにほうばる。
それを見ながら大岩は喜んでいた。
「しかし、樹怨に次ぐ新たなる災厄なのか、それとも樹怨の負の遺産なのか、
何か起こる気がしますね」
ヤマサンは不安げな表情を見せる。


 そのころ・地上
沼ノ端ではもうすぐ開催となる七夕祭りを前に準備で沸いているころであった。
しかし…
「そういえば、今日は何月何日でしたっけ」
こういう台詞がいろんな人の口から飛び交う。
地上に出ている鍵屋の口からも例外ではない。
実際に黒蛇堂と白蛇堂は異変に気がついている。
七夕祭りの準備を何日繰り返しいているのか・・・

その日の夜、祭りの準備委員になっていた沙夜子は当然のことながら
夜遅くまで働いていた。だが、うすうすは何日も働いていることに
気がついている。
しかしそれ以上の疲労感はそれを気にすることもなく眠ってしまっていた。
「あらあら・・・」
夜莉子は帰ってきてまるでバタンキューのごとく眠ってしまった沙夜子を見ていた。
「今日もねちゃって。」
夜莉子は沙夜子の様子をほほえましく見ているとともに、
彼女の着てきた服や荷物を整理していた。
その中に、1枚の紙切れがあった。
「夜11時 本日は夜の花火のシュミレーションあり。会場は沼ノ端高校裏」
おそらく沙夜子当てに描かれた紙切れだろう。
「仕方ない、今日はあたしが代わりに行きましょう」
そう言い残して夜莉子は巫女装束のまま沼ノ端高校へ向かった。

学校裏・・・
時間を間違えたのだろうか、花火のシュミレーションらしきものは見当たらない
「おかしいわね。」
仕方がないので待っていることにした。
すると・・・
「お姉さん、こんな時間に何やってるの」
「何やってるって・・・」
夜莉子が答えようとした。
しかし、その周囲には黒服を着た武装集団だった。
「いけないんだあ、こんなところに来て、計画を邪魔するなんて」
黒服の集団・・・おそらく円藤の回し者だろうか。
そういえば沙夜子は円藤のバオバブをよく思ってはいなかった。
もしかしたら沙夜子は円藤のことを調べていたのかもしれない。祭りの準備を合間を縫って、
そう夜莉子は考えてみた。
とりあえず、夜の学校、誰もいない、
柵良先生は巫女の研修でいない。鍵屋の姿もない。絶体絶命だ。
さらに悪いことに、こういう日に限ってお札を持ってきていない。完全に詰んだ。
だが、夜莉子は囲まれながらも少し筒後ろに下がっていたようだ。
そして、ある位置まで来たとき・・・
「きゃああああ」
夜莉子は落とし穴をたどるように下に落ちていった


その頃、地獄の科学捜査研究所
榊マリコの手によりバージョンアップに成功したマッチョマンレディは研究所を出ていた。
だが、そのとき
「きゃああああああああ!」
一人の少女の声が窓の外から響く
「な、何?」
声を聞いていた
『窓の外からよ!あの声は・・・夜莉子さん!?』
マッチョマンレディは驚く
『マッチョイヤーは地獄耳、そしてあなたは科学の力で分析をする。』
マッチョマンレディはマリコに言う。
「わかったわ。音の聞こえた方向へすぐに飛ばしてあげる!宇佐見さん、相馬君、お願い!」
「はい!」
宇佐見と相馬の二人の獄卒が発明した人力大砲、その中にマッチョマンレディが入る。
そして
「スイッチオン、ポチッとな!」
地獄の科捜研の所長・日野がボタンを押す!
そうするとマッチョマンレディは勢いよくはねていった。


『まるで空を飛んでいる気分、でも、あそこは三途の川・・・』
マッチョマンレディは今まさに三途の川に落ちようとしている夜莉子の姿を見た。
ただでさえ鍵屋や柵良美里による返信がない状態で三途の川に落ちる・・・
そして、その様子を日々捜査に励んでいた大岩獄卒長をはじめとする獄卒チームも見ていた
「くっ、あそこから冥土に通じていたのか!しかも三途の川の真上・・・やはり異変が起きていたのか!」
悔しそうに見ているのは大岩だけでなく、ヤマサンやダイフクも同じであった。
大岩獄卒長も夜莉子を救うことはできないのか?

そうしようとしたとき・・・
『これは緊急手段!マッチョパワーを彼女に送るわ!』
マッチョマンレディは空中でポーズをとると、その咆哮に向かって力を入れた
その風をもろに受ける夜莉子・・・


夜莉子の体は突然大きくなった。着ていた巫女装束はおろか、下着まで破れてしまう。
そして体の色は黒く染まり、女性らしい旨やおしりもすべて平らになった。
代わりに全身の筋肉がすべて隆起し、そして股間からは黒い巨大なものが伸びてきた。
さらに頭の髪の毛はすべて抜け落ちてしまった
「ま・・・ま・・・ま・・・まっちょまん、うぃうぃざあああどおおおおおおお!」
すっかり低くなった声で夜莉子は叫んだ。
叫びの反動で急いでその場でジャンプし、かろうじて川岸の部分に足がついた。
「おお、助かってるぞ!」
それを見ていた大岩は感心している。

『どういうことなの』夜莉子はマッチョマンレディにたずねる
「夜莉子さん・・・いや、マッチョマンウィザードよ、とりあえずこれを穿きなさい」
マッチョマンレディはマッチョマンのロゴの入った青いビルダーパンツを夜莉子に渡す。
夜莉子は水面に映った自分の姿を見る。
『きゃあああああ!』
底には全裸の黒人筋肉男の姿があったのだ。
『とりあえず穿いた。我は筋肉の使者・マッチョマンウィザード!』
状況を飲んだ夜莉子、いやマッチョマンウィザードはポーズをとる。
「さて、二人には地上に戻っていただきたい。地上のどこから通じているのか、我々も捜査に当たる!」
大岩は二人に言う。
『え、でもここから地上には・・・?』
マッチョマンレディは疑問に思うが
「大丈夫、この人力大砲を使えばこの二人と捜査チームを地上に遅れる!」
駆けつけた地獄の科捜研のメンバーが言う
「皆さん、乗って下さい!」
マッチョマン二人と大岩、ヤマサン、ダイフク、そして駕籠持ちのアマガサが勢いよく飛ぶ。

地上
「ここから出ていたのか!」
大岩は沼ノ端高校裏の地形に目をつける。
そして、目の前には黒服集団が立っていた。
『おまえの相手はあたし達が相手だ!さあ、来い!』マッチョマンレディが叫ぶ
そして『さあ、来い!』マッチョマンウィザードも言う。
「どうせそんな姿だって肉弾戦だろう?俺たちは頑丈な装備をいくらでも持ってるんだぜ!」
『どうかな・・・マッチョファイアー!』
マッチョマンウィザードは口から勢いよく炎をはいた。
「うぎゃああああ!」一部の黒服はそのまま倒れ込んだ。
そして、『マッチョサンダー!』
マッチョマンウィザードは雷を起こす。金属の厚い鎧を着込んだ戦闘員は全員感電した。
そして、『マッチョイラプション!』
マッチョマンウィザードの股間のパンツには大きくテントが立った。そして、そこから白い液体が勢いよく噴出する。
それはまるで火山の噴火のように
戦闘員はその場になだれ込む


「全員確保!」大岩はチームに命令する。
「ご協力を感謝します。しかし、沼ノ端高校裏が地獄に通じているとは。もしかしたら、この沼ノ端の時間の繰り返し、
何か変化するかもしれない。24時までもう少しだ。二人とも大変でしょうがしばらくそのままの姿でいて下さい。」
大岩は二人のマッチョマンに言う
『ええ~!』
二人が驚いたのは言うまでもない

頂き物・第6話「 悪夢(ナイトメア)」

 その日・・・男子水泳部キャプテンの久保丈治はなぜか部活に出席していなかった。
「なあ、今日は久保先輩休みだって」
 涼介が杏に言う。
「そうなんだ・・・」
 杏は適当に返事を合わせていたが・・・
「(まさかとは思うけど、先輩、気がついているのかな?)」
 
 だが・・・実際は違っていた。
 綺羅はここに来る数時間ほど前、黒魔術研究会によってたくましい男の体になっていた。
 その頃の体操部の一室-
 体育館の中で広げられているレスリングマットの上では、
 レスリングの吊パンを身につけ、股間から猛々しく肉棒を突き上げる厳つい男となった綺羅と、
 水泳部の競泳パンツ姿の丈二が抱き合い、そして硬くくっつきあう二人の股間からは
 ネットリと濡れる白い粘液が滴り落ちていたのであった。
 「丈二…お前はあた、いや俺の女だ、判ったな。さぁ、俺のチンポをしゃぶるんだ」
 「はい(・・・)」
 濃厚な二人の組み合わせの中でも丈二はよからぬことを考えていた。
 

 だが・・・
 バァン!
 硬く閉じられていたレスリング部のドアをこじ開けるようにして開き、
 「久保先輩っ!」
 と声を張り上げ、部室の中で絡み合う男達に向かって声をあげた人物がいた。
 それこそが黒魔術によって男になってしまった美佐だったのだ。当然競パン1枚だ。
 「久保先輩っ、あたしっ、先輩にあこがれて水泳部に入りました。
  お願いですっ!水泳部に戻ってきてください。」
 美佐は丈二の前でこういう。
 「だめっ、行かせないっ、丈二はレスリング部員なんだから」
 と丈二に絡んでいた野上綺羅が押し戻そうとする。
 すると、
 グンッ!
 美佐の競パンが突きあがり、
「先輩…先輩はこんな薄暗い部屋で汗まみれになるより、

 お日様の下で日に焼けた体を晒すほうがお似合いですよ」

と股間を盛り上げながら美佐は丈二に話しかけた。
「あっ」
 その言葉を聞いて丈二の頭の中に、
 競パン一枚で日に焼けた体を晒し水面に向かって飛び込んで行く水泳部員達のことが思い出されると
「そうだ、戻らなくっちゃ」
と呟きながら立ち上がり、美佐の手を握り締めたのであった。
「すまん、野上!俺は水泳部だ!どうしても来たかったらおまえも水泳部に来い!」
 そう言い残し、美佐と丈二は水泳部の部室へと向かった。

 そして-
 水泳部の練習が終わろうとする頃、プールには二人の競パン男が現れた。
 「遅れてごめんなさい!先輩を連れてきたわ!」
 「・・・照山さん!?」杏は驚いてしまった。
 そして、
 「美佐!あなたになんか渡すものですか!あたしも男子スイマーの体にしてもらったわ!」
 そう言ったのは競パンを穿いた元体操部員の綺羅だった。
 「わかった・・・二人ともここじゃだめだ。今夜、体育倉庫まで・・・」
 丈二は二人を押さえた。
 「わかりました」
 そういうと二人はロッカールームへ向かった。
 「なんか変だよなあ・・・」
 杏はうすうす不審な点には気がついた。

 夜更け
 杏は先ほどのことが心配だったのか帰る気になれずそのまま練習を続けていた
 「ふう・・・」
 手を取って休もうとすると一人の人影があった
 「・・・つきあうわよ」
 その人物は水泳部独特のがっしりした体型にブーメランタイプの競パンツを股間に張り付かせていた
 しかし、もっこりは杏のものよりは小さく、かわりに胸にはいくらかの大きさのカップがのっていた-美緒だ。
 「何で美緒が・・・?」
 二人でプールに入る。
 「久保丈二、やはり男子水泳部に残っていたのね。あいつの実年齢はあたし達よりももっと上なのよ」
 美緒は唐突に語る。
 「かつてあたしの兄・川田謙佑は高校時代、あいつのライバルだった。でも、あいつは兄の女装癖をネタに
あいつを追放して、どこかの高校にまで転入させたの。」
 美緒は話を続ける。
 「それだけじゃない。実はあいつは兄をはじめほかの部員をAVに出演させようとしていたの。それを兄が断った上で
兄が警察に話そうとした。でも、それを知って兄を逆に陥れたの。」
 杏の前で美緒は涙を見せていた。
 「それで、警察には言ったの?」
 「ええ。それであいつは捕まったけど、未成年だったしたいした罪にもならずの釈放、そして沼ノ端高校に入り直していた訳よ」
 「まさか、ボクや幸司も狙われていたのかな」
 杏は恐ろしくなった。
 「ええ。あんた達が犠牲にならないうちに早く手を打たないと。」
 美緒は話を続ける
 「じゃあ危ないな!体育倉庫に急がないと!」
 「・・・どういうことなの!?」
 「実は・・・」
 杏は男の体になった綺羅と美佐が丈二を取り合い、その後丈二は二人を体育倉庫に呼び出したことを言った。
 美緒と杏は急いで体育倉庫に向かった。

 その頃
 体育倉庫では3人のたくましいイケメンが絡み合っていた
 「先輩、そんな女より、あたしの方がいいでしょう」
 「何よ、そんな体操部上がりの中途半端な体より、こっちの方が」
 「二人ともやめてくれよ・・・」
 丈二は浮かれながらも倉庫の奥の方を見ていた。その奥の方にはカメラが存在していることを知っていた
 「(もうすぐ、屈強な人たちが来て、二人を・・・)」
 丈二はそう考えていた
 数分後・・・
 赤い覆面と真っ赤なビキニパンツを穿いた屈強な三人の黒人筋肉集団が現れたのだが・・・
 「あなたが用意していた集団ならとっくに倒しちゃったわよ」
 よく見れば一人はかなりの爆乳の女性だ。
 「・・・な、なんだ!?あんた達は・・・」
 『超ムキムキマッチョマン!』
 『マッチョマンレディ!』
 『マッチョマンウィザード!!』
 3人は覆面をとるとポージングをとる。
 マッチョマンレディは爆乳筋肉娘、マッチョマンとマッチョマンウイザードはビキニパンツを猛々しく膨らませた黒人筋肉男だ。
 「罪のない生徒をAVに出演させるとは、久保丈二、あんたも落ちたものだな。とても先輩とは思えない」
 マッチョマンは続ける。
 「しかもあんたを慕って男になった二人まで。もっともこれには魔術を悪用した結果だと思うけど」
 マッチョマンウィザードはさらに続ける。
 「う・・・」
 いきなり屈強な男に取り囲まれた丈二は慌てて体育倉庫の窓から逃げる。
 「うわああああああああああああ!」

 『野上さん、照山さん、けがはなかった?』
 マッチョマンは二人に言う。
 「ええ、何も・・・」
 『あいつはあなたたちを使ってAV撮影をしようとしていたのよ。あなたたちが黒人マッチョに犯されるていうね』
 マッチョマンウィザードは続けた
 「あたし達はいいんですけど、先輩、いや久保丈二を追わなくていいんですか?」
 『そこは大丈夫よ』
 マッチョマンレディは白い歯を見せながらほほえんだ。

 「ひえええええ」
 競パン姿のまま学園をさまよう丈二
 『はい、そこまでだ』
 スーツ姿の二人の男が丈二の前に来る。一人はグラサンをかけていてもう一人はやや太っていた。
 『夜の沼ノ端は地獄も同然なんでね。獄卒9係の青柳、こいつは矢沢だ。』
 グラサンの男は太めの男をたたく。
 さらに逃げようとする丈二の前に次々と現れるスーツ姿の男女、そして
 『獄卒一課9係・係長の加納倫太郎だ。あんた、いろんな人を陥れておいてそれはないよな』
 丈二の前に加納という獄卒が立ちはだかる。
 はじめは不敵な態度をとっていた丈二だったが、
 加納の背後から現れる人物を見て崩れた
 「か・・・川田・・・許してくれ・・・。女にしたのは俺が悪かった・・・」
 目の前にいる競泳パンツにスイミングキャップ、ゴーグルをつけた人物を目にしていきなり崩れ落ちた。
 「あたしは川田謙佑の妹よ。」
 美緒はキャップとゴーグルを勢いよく外した。
 「あんたは兄に飽き足らず、あたしの友達や水泳部の仲間まで手をかけようとした、許せない!」
 「先輩がそんな人だったなんて、ひどすぎますよ。これはボクたち水泳部に対する重大な裏切りです」
 そこにいたのは競パン姿の杏だった。
 『あんたはすべてを破壊したんだよ。あんたの友人だけじゃない。慕ってくれる後輩も』
 獄卒係長・加納は続ける。
 そう言うと丈二は獄卒に連行されていった。

-数時間後、地獄の入り口

 加納係長と娘婿の浅輪はマッチョマン3人と話していた
 『さすが、獄卒9係・見事な連係プレイだったわ』
 マッチョマンレディが言う
 『あなた方3人のおかげだよ。恩に着ますよ。』
 浅輪が続ける。
 『それにしても、変身するのはテレビの中だけにしたかった』
 そう超ムキムキマッチョマンは続ける。
 『あたしも、こんな姿は沙夜子には見せられないわね。』
 マッチョマンウィザードがぼやく
 『案外、わかってるかもしれませんよ』
 加納係長はさらに続けた。


-かくして、AV出演強要となっていた久保丈二は沼ノ端高校を退学となっただけでなく、
地獄の獄卒からきついお裁きを受けたそうである。
 水泳部に関してはむしろ被害者と言うことで代わりのキャプテンを用意することとなったが、
そのキャプテンの方針で水泳部には人数ごとでチーム別に分かれたという
 その一つのチームのリーダーに杏がなったのだが・・・
 「ねえ、リーダーの木之下くんって本当にいいわね。女の子みたいな美形なのにムキムキであそこも大きくて、
しかもあたしと同じ元女の子ってのが・・・」
 「はあ、あんたなんかに木之下先輩をわたすものですか!」
 綺羅と美佐は今度は杏を巡って言い争うようになってしまった。
 「やっぱりなあ・・・」
 元女子の男子水泳部員を引っ張るリーダーの杏はいくらか不安を覚えるのであった。

頂き物・第5話「疑惑(サスピション)」

6月のはじめ
 いつもの通り杏は水泳部の朝練のためプールサイドにいた。
「木之下、久しぶりに二人っきりになったな」
 そういったのは杏と同じく水泳部で、中学時代からの付き合いである
遠山幸司だ。もちろん、杏が女の子だったことは知っている
 最近はお互いに忙しくなったのか、あまり水泳部でも顔を合わせることが少なかった。
「最近忙しいし、無理もないよ。それに、もう慣れちゃったから」
「そうか…あの製薬会社の事故からもう3年だもんな。」
杏も幸司も同じようなスペックだとみられている。
二人とも学年で1,2を争うほどの美形でありながらも十分な筋肉をもち、股間に張り付いた
競パンをたけだけしく張り上げている。この二人を見て気にならない女子生徒はいないだろう。
しかし…
「おお、木之下に遠山、お前ら、いい体してるよな!」
そういいながら一人の男子部員が杏と幸司の体に障ってきた。
彼の名前は久保丈二。3年生で水泳部の現キャプテンだ。
「ちょっと、何するんですか、セクハラですよ!」
杏は思わず女の子の時だったように言ってしまう
「なにって、男同士じゃないか」
「先輩、嫌がってるんですからほどほどにしてくださいよ、まったく」
幸司はあきれながら言った。
「ああ、すまんすまん。じゃあ、早く朝練を始めるぞ!
丈二は二人を置いてプールに飛び込んだ。
「本当に困ったもんだなあ」
杏は自分が女子だけでなく、男色を好む男性からも注目されていることを思い知らされた。

朝練が終わるころ、涼介が杏の前にやってきた。
「木之下、お前、この後すぐに生徒指導室に来いって。お前、何かやったのか?」
涼介が杏に言う?
「ええっ?ボク、何もしてないんだけどなあ…」
杏は急に呼び出されたことを思い出す。
「そういえばちょっと髪が長いかもしれないけど…」
沼ノ端高校の校則はほかの学校に比べると緩いといわれることが多い。
逆に言えば生徒指導室に呼び出されるのはよほどの問題を起こした場合だということだ。
「やばいなあ…」
杏は一瞬恐れおののいた。
「まあ、生徒指導の先生、結構美人の先生だから、そこはうらやましいなあ」
涼介は他人事のようにちゃらかす。
生徒指導部―中学生の時、女の子の時のように髪を伸ばしていてバッサリと髪を切られた。
自分が”女”であることを否定された場所でもあった。
「嫌なことがおこらなきゃいいけど…」

朝練後
生徒指導室は、どういうわけか保健室とは近い場所にあった。
「遅くなっちゃった」
杏は急いで生徒指導室に来ると、勢いよくノックをした。
「入って」
女性の声がした。

「あれ?」
「杏ちゃん、お久しぶりね」
目の前にいる女性は、やや青みがかかった髪をしている美人の女性で教師らしく
リクルートスーツを着ていた。
「確か柵良先生の妹の茉莉先生…」
保健医の柵良美里の妹で、普段は竜宮神社の巫女をしているのだが、
どうも生徒指導も兼ねてるようだ。
「(そういうことか)」
杏は感づいた。
「…あの、ボク何かしたんですか?」
杏は恐る恐る茉莉に問いかける
「いや、何をしたっていうんじゃないんだけど、ちょっと確かめてほしいものがあるの」
そういうと茉莉は写真を取り出した。
「これは…久保先輩!?」
「彼なんだけど、彼にはとんでもない疑惑があるの」
「確かに男が好きそうな感じはしましたが」
「それだけじゃないの、これを見てほしいの」
茉莉はなぜか着ているリクルートスーツを脱ぎ始めた。
「これは…ゲイポルノ?」
ちょうど動画サイトなどでネタにされているような生易しい作品ではないようだが…
「あ、再生するのは少し待ってね」
スーツを脱いで下着姿になった茉莉。杏が元女であると知っているのか、上のブラジャーも外していた
そして、下には水色のパンツ1枚になった。そして、
彼女がおもむろに力を入れる。
「(マッチョマンレディ、メイクアップ)」小声でそうつぶやくと、たちまち筋肉ムキムキ、漆黒の肌、スキンヘッドの
”マッチョマンレディ”へと変身した
『こうでも変身しないと見るに堪えないものなのよ』
レディは白い歯をむき出しにしながら答えた。

ビデオから流れたもの

―『お前のようなチャラチャラした奴がうろつかれるとこっちが迷惑なんだよ』

『だから、それだどーしたってぇ?』

と男性達がつかみあうシーンや、

『憲二、やめろぉ!』

『せっ先輩、好きです、

 おっ俺…

 先輩のが…』

といったシーンから、あるいは激しい輪姦といったものまで様々なシーンがあった。

「このビデオに久保先輩が…」
杏にも顔はわからなかった。だが、何回か問題のシーンを見たところ
「この体の特徴、ボクが普段よく見ている久保先輩と似ています。」
『そう、わかったわ。』
マッチョマンレディは杏のほうを見る。
「顔はわかりませんが、体つきを見ればこぼ先輩で間違いないでしょう。
うまく顔や声も隠してるし…」
杏がいった。
『たしかに、うちの高校ではAV出演はもってのほか、でも証拠がない限りは処分は下せない。
でも、そのせいでほかの生徒がきづつくことになったとしたらどうかしら。』
マッチョマンレディは話を続ける。
『この話を教えてきてくれた人がいるの、入っていいわ。』
『失礼します。』
「えっ!?」
 紺色のハイソックスに女子用の上履きをはいている。だが、その上は190㎝はあろうかという身長、全身の筋肉がたくましく隆起し、
アシックスのシンプルな競パンを猛々しく突き上げている。顔は黒いキャップとセパレートのゴーグルで覆われている。
首から女子の制服についているようなリボンを下げていて、手にはカフスボタンがついているが、
まぎれもなく競パンマン、いや、競パンマンに変身したまま学校に登校した咲子というべきだろうか。
『今日は風紀委員の取り締まりが厳しい日で、咲子さんが風紀委員なの知ってるでしょ』
マッチョマンレディがそういう。たしかに腕には風紀委員の腕章がある。
沼ノ端高校は化生の力を持った生徒が多く、必要に応じて化生の姿をとることは許されている。

『この話を知ったのは、あたしなの』
競パンマンは話を続ける。
『あたしと仲のいい野上綺羅と、水泳部の梢美佐って女の子、二人が久保先輩を巡って言い争うようになって…』
『しかも、二人ともこのDVDの存在は知っている、つまり二人とも久保先輩のために男になろうって…』
杏は言った。
「わかった。つまり、久保先輩に処分を下すことを考えているっていう話ね。」


生徒指導室から出た杏
「今日も部活があったな。部活の時にでも先輩に聞いてみるか。」

だが、その日、杏が想像していた以上に恐ろしいことが起ころうとしていた

続く

@wolksさんより以下の作品を投稿していただきました。

@wolksさんより以下の作品を頂きました

水泳部の男の娘Ⅱ
 第1話「新入生(ニューカマー)」

 第2話「転入生(ライバル)」

 第3話「黒幕(プロデューサー)」

 第4話「変心(グロウアップ)」

頂き物・第4話「変心(グロウアップ)」

第4話「変心(グロウアップ)」

 5月
 今年は例年より暑くなり始めたころー
 沼ノ端市ではプール開きを待てない若者たちが端ノ湖のビーチでたむろしていた。
 ほかのクラスメイト達と遊びに来ていた杏たちもそれである。

 
 「おっ、木之下。いつもの競パンじゃないのか?」
 杏は珍しくハワイ柄のオレンジ色のトランクスタイプの水着を着ていた。
 「いつもの恰好じゃ能がないからね」
 杏はクールに切り返した。
 「咲子も、競パンマンの姿で来るのかとおもっちゃった」
 クラスメイトの女子は咲子の前でいじる
 「やめてよ、もう。」
 咲子もセパレートタイプの流行の水着にパレオを巻いて着ていた。
 「今日は部活でもないし、みんなで遊びに来たんだから」
 そういうと杏たちは水を掛け合い、じゃれあっていた。
 湖の岸辺で砂に埋めるような湖水浴、
 海辺でのバーベキュー、
 などなど、今がまるで真夏の、南国のリゾートを思わせる空気の中にいた。

 その日の夕方。
 杏たちのメンツは一番最後まで残っていたが、
 彼らが準備したものはすべて自分たちのカバンにうまく収めるなど、
 まさに自分で出したごみはすべて持ち帰っていた。
 しかし、
 「ひどいなあ、これ。」
 「ここがまるでごみ溜めじゃないか」
 面々は湖岸に打ち捨てられた、ビーチパラソルやシートの残骸、
 ペットボトル、空き缶、食べ残し、サンダルなどなど
 まさにゴミの山といっても過言ではなかった。
 観光客の多い海岸の宿命ともいうべきだろう。
 それを見ながら遅い時間になったため家に帰ろうとする面々。
 しかし、
 咲子は
 「あ、忘れ物を思い出したから、先に帰ってて」
 そういうと咲子は一人の湖岸に来た。
 咲子をはじめ全員は水着の上にTシャツを着た格好で行きかえりは来ていたが、
 咲子はパレオの下に、競パンマンのロゴが入った競パンを潜ませていた。
 そして、Tシャツと水着を脱いで競パン姿となり、
 「競パンマーン!ビルドアッーーーっプ!」
 と小さく叫び、筋肉ムキムキのヒーロー・競パンマンへと変身する。
 競パンマンは見る見るうちに湖岸や湖の浅いところにあるごみをかたずけ、
 ひとつの場所に集積した。
 『とりあえず旗でも立てておくか』
 そうするとゴミの中から紙やシートをとりだし、競パンマンの旗へと姿を変える。
 湖岸の衛生は競パンマンにより守られたのだ。

 『さてと、あたしも元の姿に…』
 そういおうとしたところに、集団が目に入った。
 
 「ああ?お前ら、俺たちに文句を付けるのか?」
 夜の湖岸に認められる風景、カツアゲである
 なにやらチンピラに男子高校生と思しき少年と別の少女が立っていた。
 「おまえ、なんだよ?ああ、女みたいな顔して、そのくせパンツをもっこ利させやがって」
 少年のほうはビキニパンツをはいているのがわかった。
 『あ…あの子は…』
 競パンマンは少年のほうに見覚えがあるようだ。
 『…桂木くん?』 
 少年は桂木青葉、男子水泳部の後輩でしかも元女子だ。

 「だいたい、あなたたちのほうが先にぶつかってきたんでしょう!」
 青葉はチンピラにひるむことなく声をかける。
 「ああ!?てめえ、生意気だぞ!」
 チンピラは青葉に殴り掛かろうとした。そのとき!
 チンピラの拳を競パンマンのもっこりが抑えていた
 「ああん?なんだてめえは?」
 『私は湖岸のヒーロー・競パンマンだ!』
 そういうと競パンマンは必殺・競パンキックを繰り出す。
 チンピラはたちまち遠くへ飛んでいった

 「助けてくれてありがとうございました」
 青葉はそういうと
 『そうだ、青葉君、君に話があるんだ。』
 競パンマンは青葉のみここに残るように言った。

 夜の湖岸に競パンマンと青葉が座っている
 「…桜庭先輩ですよね。杏さんから聞いてます」
 『ええ、そうよ。』
 競パンマンは答える
 『そういえば杏もあなたと同様、中学時代はどん底だったの。
 でも、杏は去年まで自信を無くしてたあたしを救ってくれた』
 『それに、あたしにも人を守ろうとか、ヒーローというかそういう心が芽生えてきたの』
 『…この姿になったからっていうのもあったけど』
 「僕もそうなったのかな。」
 「男になってから引きこもってばかりだったのに。杏さんにあって、自分に変化が…」
 「僕も男になって、初めて友達もできて、部活も楽しいし…」
 沼ノ端に来たこと、そして杏とであったことが青葉の心の成長につながったのだった。

 帰り道、競パンマンは自分の持ってきた荷物を手に持ってた。
 その体には似合わないおしゃれなバッグだったが。
 「その姿のまま帰るんですか?」
 『ええ。だってあたしは沼ノ端のヒーロー、競パンマンだから』
 『この姿で街を歩く勇気も、身についたしね。』
 二人は夜の沼ノ端を家路で急いだ。

 
 数日後。例年より早いプール開きに合わせ、市内のプールでは男子小学生を集めて水泳教室を開いていた。
コーチは杏、青葉、琴美、咲子、それに市内プールのコーチの黒髪、金髪、赤髪の三兄弟だ。
 小学生たちのはしゃぐ姿は、これまた初々しいものもあるが、杏たちの注意を聞かないのも事実だ
 「さて、咲子お姉さんには休憩してもらって、ここで特別コーチがつくぞー」
 赤髪の少年がいうと
 『私は競パンマンだ!私がいうことを聞かない君たちに見本を見せよう』
 そういうと競パンマンは飛び込み台に行く
 飛び込み台から飛び込むと同時に、びゅんっと音が立った
 なんと競パンマンのパンツが脱げてしまった。
 そして、競パンマンは巨大なイチモツをさらしたままダイブした
 「すげえなあ」
 「これが競パンマンのあれかあ!」
 「でけえ!」
 小学生の歓声が沸く
 「ドッキリ大成功だぜ!」
 金髪の少年が言う。

 その日の夜。プールサイドのバーベキューでは、変身を説いた、女子用の競泳水着姿の咲子が顔を赤らめていた
 「もう。本当に恥ずかしかったんだから」
 顔を赤らめる咲子
 『でも、あのときに「さっきのフルチン野郎は咲子お姉さんだぞー」とか言おうと思っちゃった。』
 『もう、姉さんてば。』
 そういう蛇堂姉妹。
 そして、
 「僕も桜庭先輩と杏さんを見習ってかっこよくならないと」
 青葉はそう思うのだった。