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風祭文庫・頂き物の館

風祭文庫の頂き物なども納める書庫です

頂き物・第4話「変心(グロウアップ)」

第4話「変心(グロウアップ)」

 5月
 今年は例年より暑くなり始めたころー
 沼ノ端市ではプール開きを待てない若者たちが端ノ湖のビーチでたむろしていた。
 ほかのクラスメイト達と遊びに来ていた杏たちもそれである。

 
 「おっ、木之下。いつもの競パンじゃないのか?」
 杏は珍しくハワイ柄のオレンジ色のトランクスタイプの水着を着ていた。
 「いつもの恰好じゃ能がないからね」
 杏はクールに切り返した。
 「咲子も、競パンマンの姿で来るのかとおもっちゃった」
 クラスメイトの女子は咲子の前でいじる
 「やめてよ、もう。」
 咲子もセパレートタイプの流行の水着にパレオを巻いて着ていた。
 「今日は部活でもないし、みんなで遊びに来たんだから」
 そういうと杏たちは水を掛け合い、じゃれあっていた。
 湖の岸辺で砂に埋めるような湖水浴、
 海辺でのバーベキュー、
 などなど、今がまるで真夏の、南国のリゾートを思わせる空気の中にいた。

 その日の夕方。
 杏たちのメンツは一番最後まで残っていたが、
 彼らが準備したものはすべて自分たちのカバンにうまく収めるなど、
 まさに自分で出したごみはすべて持ち帰っていた。
 しかし、
 「ひどいなあ、これ。」
 「ここがまるでごみ溜めじゃないか」
 面々は湖岸に打ち捨てられた、ビーチパラソルやシートの残骸、
 ペットボトル、空き缶、食べ残し、サンダルなどなど
 まさにゴミの山といっても過言ではなかった。
 観光客の多い海岸の宿命ともいうべきだろう。
 それを見ながら遅い時間になったため家に帰ろうとする面々。
 しかし、
 咲子は
 「あ、忘れ物を思い出したから、先に帰ってて」
 そういうと咲子は一人の湖岸に来た。
 咲子をはじめ全員は水着の上にTシャツを着た格好で行きかえりは来ていたが、
 咲子はパレオの下に、競パンマンのロゴが入った競パンを潜ませていた。
 そして、Tシャツと水着を脱いで競パン姿となり、
 「競パンマーン!ビルドアッーーーっプ!」
 と小さく叫び、筋肉ムキムキのヒーロー・競パンマンへと変身する。
 競パンマンは見る見るうちに湖岸や湖の浅いところにあるごみをかたずけ、
 ひとつの場所に集積した。
 『とりあえず旗でも立てておくか』
 そうするとゴミの中から紙やシートをとりだし、競パンマンの旗へと姿を変える。
 湖岸の衛生は競パンマンにより守られたのだ。

 『さてと、あたしも元の姿に…』
 そういおうとしたところに、集団が目に入った。
 
 「ああ?お前ら、俺たちに文句を付けるのか?」
 夜の湖岸に認められる風景、カツアゲである
 なにやらチンピラに男子高校生と思しき少年と別の少女が立っていた。
 「おまえ、なんだよ?ああ、女みたいな顔して、そのくせパンツをもっこ利させやがって」
 少年のほうはビキニパンツをはいているのがわかった。
 『あ…あの子は…』
 競パンマンは少年のほうに見覚えがあるようだ。
 『…桂木くん?』 
 少年は桂木青葉、男子水泳部の後輩でしかも元女子だ。

 「だいたい、あなたたちのほうが先にぶつかってきたんでしょう!」
 青葉はチンピラにひるむことなく声をかける。
 「ああ!?てめえ、生意気だぞ!」
 チンピラは青葉に殴り掛かろうとした。そのとき!
 チンピラの拳を競パンマンのもっこりが抑えていた
 「ああん?なんだてめえは?」
 『私は湖岸のヒーロー・競パンマンだ!』
 そういうと競パンマンは必殺・競パンキックを繰り出す。
 チンピラはたちまち遠くへ飛んでいった

 「助けてくれてありがとうございました」
 青葉はそういうと
 『そうだ、青葉君、君に話があるんだ。』
 競パンマンは青葉のみここに残るように言った。

 夜の湖岸に競パンマンと青葉が座っている
 「…桜庭先輩ですよね。杏さんから聞いてます」
 『ええ、そうよ。』
 競パンマンは答える
 『そういえば杏もあなたと同様、中学時代はどん底だったの。
 でも、杏は去年まで自信を無くしてたあたしを救ってくれた』
 『それに、あたしにも人を守ろうとか、ヒーローというかそういう心が芽生えてきたの』
 『…この姿になったからっていうのもあったけど』
 「僕もそうなったのかな。」
 「男になってから引きこもってばかりだったのに。杏さんにあって、自分に変化が…」
 「僕も男になって、初めて友達もできて、部活も楽しいし…」
 沼ノ端に来たこと、そして杏とであったことが青葉の心の成長につながったのだった。

 帰り道、競パンマンは自分の持ってきた荷物を手に持ってた。
 その体には似合わないおしゃれなバッグだったが。
 「その姿のまま帰るんですか?」
 『ええ。だってあたしは沼ノ端のヒーロー、競パンマンだから』
 『この姿で街を歩く勇気も、身についたしね。』
 二人は夜の沼ノ端を家路で急いだ。

 
 数日後。例年より早いプール開きに合わせ、市内のプールでは男子小学生を集めて水泳教室を開いていた。
コーチは杏、青葉、琴美、咲子、それに市内プールのコーチの黒髪、金髪、赤髪の三兄弟だ。
 小学生たちのはしゃぐ姿は、これまた初々しいものもあるが、杏たちの注意を聞かないのも事実だ
 「さて、咲子お姉さんには休憩してもらって、ここで特別コーチがつくぞー」
 赤髪の少年がいうと
 『私は競パンマンだ!私がいうことを聞かない君たちに見本を見せよう』
 そういうと競パンマンは飛び込み台に行く
 飛び込み台から飛び込むと同時に、びゅんっと音が立った
 なんと競パンマンのパンツが脱げてしまった。
 そして、競パンマンは巨大なイチモツをさらしたままダイブした
 「すげえなあ」
 「これが競パンマンのあれかあ!」
 「でけえ!」
 小学生の歓声が沸く
 「ドッキリ大成功だぜ!」
 金髪の少年が言う。

 その日の夜。プールサイドのバーベキューでは、変身を説いた、女子用の競泳水着姿の咲子が顔を赤らめていた
 「もう。本当に恥ずかしかったんだから」
 顔を赤らめる咲子
 『でも、あのときに「さっきのフルチン野郎は咲子お姉さんだぞー」とか言おうと思っちゃった。』
 『もう、姉さんてば。』
 そういう蛇堂姉妹。
 そして、
 「僕も桜庭先輩と杏さんを見習ってかっこよくならないと」
 青葉はそう思うのだった。