読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

風祭文庫・頂き物の館

風祭文庫の頂き物なども納める書庫です

頂き物・第7話「樹環外伝」 

-閻魔王庁・副司令室
 コンコン!
 ドアをノックする音が響く
 「入りたまえ」
 ジョルジュ副司令は落ち着いた表情で答える。
 「失礼します」
 スーツを着た一人の男が入ってきた。
 彼の名前は大岩純一。ヒラから成り上がった最強の獄卒長と呼ばれている男だ。
 「樹怨のあの事件、まだ終わっていないのではないかと思いまして。」
 大岩は唐突に話を切り出す。
 「あの、樹の少女たちのことか?」
 ジョルジュ副司令は言う。
 「はい。あの樹の少女たちは何回か三途の川、彼岸のほうに来ています。まあ、彼岸に来ても
彼女たちが何か悪さをしているわけではありませんので様子を見るしかありません。
 しかし、もしかしたら沼ノ端には何箇所か三途の川に通じている場所があるのかもしれません」
 大岩はその指摘をする。
 「なるほど、前の災厄のとき、鍵屋の魔法により、柵良たちが彼岸に到達するルートを辿ったが、
そこは確か沼ノ端とは離れた東北のほうだったな。あのルートはたしか鍵屋が一旦閉鎖したはずだが」
 ジョルジュは七夕の飾りをいじっている。
 「沼ノ端から、地獄に通じる道はあります。たとえば御神木を伝えば翠果の森などに出ることはできます。
しかし、現世の人間が地獄に行くためには化生の力が必要となります。化生の力を持つ人間かあるいは
化生の力をもったものに変身しなければ地獄を通過することはできません。」
 大岩は窓の外にある何本もの樹木を見ている。
 「そうか。ひいてはそのルートがあれば現世の人間がこちらに入り込んでしまう可能性がある、か。」
 ジョルジュは納得しながらそう返す。
 「ですので、この件に関しまして、われわれのほうでもう少し調べてみたいと思います。」
 大岩はさらに声を張り上げる。
 「そうか、大岩獄卒長、ベリー・グッドです。」
 ジョルジュはそういうと
 「ありがとうございます!」
 大岩は頭を下げた。

 副司令室を出る大岩。
 副司令室の前の廊下には、白衣を着た一人の女性が立っていた。
 「今日も研究ですか、ドクター・榊」
 大岩はじゃれあうかのように答える。
 「そういうんじゃないわよ。」
 榊という女性は白い白衣をぬぐった。
 女性の名前は榊マリコ。閻魔王庁の科学研究所、通称「地獄の科捜研」の女性研究員だ。
 「白衣を洗濯したのか。この間はずいぶんと血で汚れていたものだ。」
 大岩は答える。
 「ええ。亡者を使った研究でね。結構血が流れたのでさすがに洗濯したの。
地獄の法医学教室の二宮先生ほどじゃないけどね。」
 マリコはども…大岩に返事を返す。
 「今日はまた洗濯して、誰か来るのか?」
 「ちょっとDr.ダンに頼まれたから。現世からくる人間の強化をね。沼ノ端の災厄、
これだけじゃ終わらない気がしたから。」
 「そうか。お前も沼ノ端の災厄がまだあると考えているのか。お互い、切り口は違うが
その異変が何なのか、必ずホシを挙げてみせる。」
 大岩はそういうと廊下を去っていった。

 さて、大岩が獄卒の詰め所に戻ろうとすると、ドアの前で黒い大きな筋肉の塊があったことに気がつく。
スキンヘッドに漆黒の肌、全身をよろいのように覆う隆起した筋肉、そして青いブーメランパンツ。
ただそのブーメランパンツのふくらみは小さく、変わりに胸には二つの脂肪の塊が…
「おや、あなたは柵良茉莉さん。何の御用ですか?」
大岩は目の前の筋肉の塊に対してたずねる。
『今日はマリコさんに強化をお願いしていますの』
柵良茉莉、いやマッチョマンレディはこう答える。
「そうですか、で、うちの部署の前で何をしているんですか?」
大岩は答える
『実はこれを差し入れに来まして。』
マッチョマンレディが持っているもの。それは竜宮神社特性の大福もちだ。
「これはこれは、どうもありがとうございます。これは私のほうから渡しておきます。」
大岩は大福を受け取った
ガチャ。大岩が部屋に入る。
「ほら、ダイフク。差し入れだ」
「ありがとうございます」
ダイフクと呼ばれた獄卒はうれしそうにほおばる
「まーた大福かよ!」
獄卒のヤマサンが答える
「この大福の二重構造、白いもちで黒い餡を包む…
でもこっちは黒い餅で中の餡は緑っぽい…
色はともかく、この二重構造が」
ダイフクはおいしそうにほうばる。
それを見ながら大岩は喜んでいた。
「しかし、樹怨に次ぐ新たなる災厄なのか、それとも樹怨の負の遺産なのか、
何か起こる気がしますね」
ヤマサンは不安げな表情を見せる。


 そのころ・地上
沼ノ端ではもうすぐ開催となる七夕祭りを前に準備で沸いているころであった。
しかし…
「そういえば、今日は何月何日でしたっけ」
こういう台詞がいろんな人の口から飛び交う。
地上に出ている鍵屋の口からも例外ではない。
実際に黒蛇堂と白蛇堂は異変に気がついている。
七夕祭りの準備を何日繰り返しいているのか・・・

その日の夜、祭りの準備委員になっていた沙夜子は当然のことながら
夜遅くまで働いていた。だが、うすうすは何日も働いていることに
気がついている。
しかしそれ以上の疲労感はそれを気にすることもなく眠ってしまっていた。
「あらあら・・・」
夜莉子は帰ってきてまるでバタンキューのごとく眠ってしまった沙夜子を見ていた。
「今日もねちゃって。」
夜莉子は沙夜子の様子をほほえましく見ているとともに、
彼女の着てきた服や荷物を整理していた。
その中に、1枚の紙切れがあった。
「夜11時 本日は夜の花火のシュミレーションあり。会場は沼ノ端高校裏」
おそらく沙夜子当てに描かれた紙切れだろう。
「仕方ない、今日はあたしが代わりに行きましょう」
そう言い残して夜莉子は巫女装束のまま沼ノ端高校へ向かった。

学校裏・・・
時間を間違えたのだろうか、花火のシュミレーションらしきものは見当たらない
「おかしいわね。」
仕方がないので待っていることにした。
すると・・・
「お姉さん、こんな時間に何やってるの」
「何やってるって・・・」
夜莉子が答えようとした。
しかし、その周囲には黒服を着た武装集団だった。
「いけないんだあ、こんなところに来て、計画を邪魔するなんて」
黒服の集団・・・おそらく円藤の回し者だろうか。
そういえば沙夜子は円藤のバオバブをよく思ってはいなかった。
もしかしたら沙夜子は円藤のことを調べていたのかもしれない。祭りの準備を合間を縫って、
そう夜莉子は考えてみた。
とりあえず、夜の学校、誰もいない、
柵良先生は巫女の研修でいない。鍵屋の姿もない。絶体絶命だ。
さらに悪いことに、こういう日に限ってお札を持ってきていない。完全に詰んだ。
だが、夜莉子は囲まれながらも少し筒後ろに下がっていたようだ。
そして、ある位置まで来たとき・・・
「きゃああああ」
夜莉子は落とし穴をたどるように下に落ちていった


その頃、地獄の科学捜査研究所
榊マリコの手によりバージョンアップに成功したマッチョマンレディは研究所を出ていた。
だが、そのとき
「きゃああああああああ!」
一人の少女の声が窓の外から響く
「な、何?」
声を聞いていた
『窓の外からよ!あの声は・・・夜莉子さん!?』
マッチョマンレディは驚く
『マッチョイヤーは地獄耳、そしてあなたは科学の力で分析をする。』
マッチョマンレディはマリコに言う。
「わかったわ。音の聞こえた方向へすぐに飛ばしてあげる!宇佐見さん、相馬君、お願い!」
「はい!」
宇佐見と相馬の二人の獄卒が発明した人力大砲、その中にマッチョマンレディが入る。
そして
「スイッチオン、ポチッとな!」
地獄の科捜研の所長・日野がボタンを押す!
そうするとマッチョマンレディは勢いよくはねていった。


『まるで空を飛んでいる気分、でも、あそこは三途の川・・・』
マッチョマンレディは今まさに三途の川に落ちようとしている夜莉子の姿を見た。
ただでさえ鍵屋や柵良美里による返信がない状態で三途の川に落ちる・・・
そして、その様子を日々捜査に励んでいた大岩獄卒長をはじめとする獄卒チームも見ていた
「くっ、あそこから冥土に通じていたのか!しかも三途の川の真上・・・やはり異変が起きていたのか!」
悔しそうに見ているのは大岩だけでなく、ヤマサンやダイフクも同じであった。
大岩獄卒長も夜莉子を救うことはできないのか?

そうしようとしたとき・・・
『これは緊急手段!マッチョパワーを彼女に送るわ!』
マッチョマンレディは空中でポーズをとると、その咆哮に向かって力を入れた
その風をもろに受ける夜莉子・・・


夜莉子の体は突然大きくなった。着ていた巫女装束はおろか、下着まで破れてしまう。
そして体の色は黒く染まり、女性らしい旨やおしりもすべて平らになった。
代わりに全身の筋肉がすべて隆起し、そして股間からは黒い巨大なものが伸びてきた。
さらに頭の髪の毛はすべて抜け落ちてしまった
「ま・・・ま・・・ま・・・まっちょまん、うぃうぃざあああどおおおおおおお!」
すっかり低くなった声で夜莉子は叫んだ。
叫びの反動で急いでその場でジャンプし、かろうじて川岸の部分に足がついた。
「おお、助かってるぞ!」
それを見ていた大岩は感心している。

『どういうことなの』夜莉子はマッチョマンレディにたずねる
「夜莉子さん・・・いや、マッチョマンウィザードよ、とりあえずこれを穿きなさい」
マッチョマンレディはマッチョマンのロゴの入った青いビルダーパンツを夜莉子に渡す。
夜莉子は水面に映った自分の姿を見る。
『きゃあああああ!』
底には全裸の黒人筋肉男の姿があったのだ。
『とりあえず穿いた。我は筋肉の使者・マッチョマンウィザード!』
状況を飲んだ夜莉子、いやマッチョマンウィザードはポーズをとる。
「さて、二人には地上に戻っていただきたい。地上のどこから通じているのか、我々も捜査に当たる!」
大岩は二人に言う。
『え、でもここから地上には・・・?』
マッチョマンレディは疑問に思うが
「大丈夫、この人力大砲を使えばこの二人と捜査チームを地上に遅れる!」
駆けつけた地獄の科捜研のメンバーが言う
「皆さん、乗って下さい!」
マッチョマン二人と大岩、ヤマサン、ダイフク、そして駕籠持ちのアマガサが勢いよく飛ぶ。

地上
「ここから出ていたのか!」
大岩は沼ノ端高校裏の地形に目をつける。
そして、目の前には黒服集団が立っていた。
『おまえの相手はあたし達が相手だ!さあ、来い!』マッチョマンレディが叫ぶ
そして『さあ、来い!』マッチョマンウィザードも言う。
「どうせそんな姿だって肉弾戦だろう?俺たちは頑丈な装備をいくらでも持ってるんだぜ!」
『どうかな・・・マッチョファイアー!』
マッチョマンウィザードは口から勢いよく炎をはいた。
「うぎゃああああ!」一部の黒服はそのまま倒れ込んだ。
そして、『マッチョサンダー!』
マッチョマンウィザードは雷を起こす。金属の厚い鎧を着込んだ戦闘員は全員感電した。
そして、『マッチョイラプション!』
マッチョマンウィザードの股間のパンツには大きくテントが立った。そして、そこから白い液体が勢いよく噴出する。
それはまるで火山の噴火のように
戦闘員はその場になだれ込む


「全員確保!」大岩はチームに命令する。
「ご協力を感謝します。しかし、沼ノ端高校裏が地獄に通じているとは。もしかしたら、この沼ノ端の時間の繰り返し、
何か変化するかもしれない。24時までもう少しだ。二人とも大変でしょうがしばらくそのままの姿でいて下さい。」
大岩は二人のマッチョマンに言う
『ええ~!』
二人が驚いたのは言うまでもない